肩インピンジメント症候群は、肩関節を動かしたときに肩峰下(肩の一番外の出っ張っている骨)のスペースで腱板(主に棘上筋腱)や滑液包が衝突して炎症を起こす状態です。
• 主に挙上・外転・内旋の組み合わせ動作で痛みが出ます。
• 長期間放置すると腱板部分断裂や肩関節可動域制限に進行することがあります。
肩関節は球関節で広い可動域を持つため、安定性が不十分です。そのため、複雑な力学が働き、次の要因が重なるとインピンジメントが起こります。
1. 肩甲骨の動きの異常(肩甲胸郭リズムの崩れ)
• 肩甲骨の外転・上方回旋が不十分だと、肩峰下スペースが狭くなる
2. 腱板筋(棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋)のアンバランス
• 腱板筋の弱化や過緊張により、上腕骨頭の位置が不安定になり、衝突が生じる
3. 反復運動による摩耗・炎症
• 投球・テニス・バレーボールなど、腕を挙げる動作の繰り返しで炎症が慢性化
分類
① 外傷性インピンジメント
• 肩関節の外傷後に発症
• 棘上筋腱損傷や滑液包炎を伴うことが多い
② 慢性機械性インピンジメント
• 反復動作による腱板と肩峰の摩擦が原因
• 成長期アスリートや肩を酷使する職業で多い
③ 二次性インピンジメント
• 腱板や関節包の拘縮、肩甲骨運動不全に起因
• 肩関節周囲の筋バランス異常が背景
診断のポイント
• Neerテスト、Hawkinsテストなどで肩峰下の痛みを再現
• 肩外転90°前後での痛みは典型的
• エコーやMRIで腱板腱の炎症・部分断裂を確認可能
鍼灸・施術アプローチ
1. 局所アプローチ
• 棘上筋・棘下筋・肩甲下筋・三角筋前部の筋緊張を緩める
• 血流改善による炎症部の修復促進
2. 周囲筋・肩甲骨アプローチ
• 僧帽筋・広背筋・菱形筋など肩甲骨の安定性に関与する筋群を調整
• 肩甲骨運動の改善で肩峰下スペースを広げる
3. 関節可動域・フォーム改善
• 肩関節・肩甲骨の連動性を高め、衝突ストレスを減少
• 投球や腕挙げ動作時の力学を改善
4. 再発予防
• インナーマッスル(腱板・肩甲骨周囲筋)の強化
• 肩甲骨や肩関節周囲の筋肉のストレッチ、負担軽減
• 鍼灸による過緊張の定期的な緩和・疲労回復
















